[[circle/members]]

**自己紹介 [#u6da3804]
井上亜星(イノウエアセイ)。数学系志望。整数論がやりたい。
* イノウエ [#tf5e1d13]

- Twitterは@seasawherだが現在稼働していない

**人に相談した問題など [#kfb601f8]
- 2016年に入学.そのまま2020年に学部を卒業

問1.アーベル群G,H、NがありG/H=NかつN⊂GであるときG=N×Hになるか。
- 学部では3回生まで整数論をやっていたが4回生で代数幾何に手を出して悲惨なことになり,その後院では離散最適化に転向.

答.セミナー中に話題になった問題。判らない。完全系列が分裂する条件を考えれば、Nが自由Abel群ならGは直積になることがわかる。N⊂Gという必要条件が十分条件になるかどうか。
 

問2. F=Z/2Zとする。RをFの加算無限個の直積、IをFの加算無限個の直和とし、IをRのイデアルだとみなす。このときR/Iはflatであることを示せ。

答.RがBoolean ringであることから、Booleanは絶対平坦というすごい定理に帰着することを教えていただいた。0→I→Rに対してテンソルがexact functorなのかどうかで悩んでいたが、テンソルするとゼロになるという事実に気づいていなかった。
* 院試について [#i24b3056]

京大数学の院試の過去問を10年ぶんくらい解いて片っ端からTeX打ちし,そのPDFを無料公開しています.よかったらどうぞ.

URLは次の通り.

問3.RはGCD整域, IはRの射影的加群とする。このときIは単項イデアルであることを示せ.
https://github.com/Seasawher/graduate_exam

答.Osborne「Basic Homological Algebra」(p.96)の問題。山崎圭次郎「環と加群」に答えがあった。いわく、整域の商体の部分加群が可逆であることと、0でない射影的加群であることが同値(p.393)。また、GCD整域の可逆イデアルは単項イデアル(p.451)。
* 本について [#r5e627fc]

問4.Rは体でないUFDとする。このとき&br;RがPID ⇔ Rのweak dimensionが1 
 
答.これもOsborne(p.96)から。weak dimensionのところをKrull dimensionに置き換えれば可換環論の問題である。左→右は明らかなので、左←右を示したいが、対偶をとりPIDでないと仮定してweak dimensionが2以上であることを示せばよい。証明は次の通り。
RがPIDでないとする。このとき同伴でない素元p,qであってI=pR+qRが全体でないものがある。Iは明らかにfinitely generatedだが、RがUFDなのでfinitely presentedでもあることを教えていただいた。だからIがもしflatなら、Iはprojectiveであり問3より単項イデアルとなる。ところがRはUFDなのでこれは矛盾。よってIはflatでなく、 Rのweak dimensionは2以上であることが判る。
学部2回のころから,誰かの参考になればと思って大学数学の文献案内メモを書き続けています.

問5.二つの被覆写像の合成は被覆写像となるか。
詳しくは以下の私のブログを見てください.

答.何もわかっていない。
https://seasawher.hatenablog.com/entry/2020/04/25/175335


**本について [#i8348ba8]
僕が好きなのは
①自明でない例がたくさん載っていて
②行間がほとんどない
という二つの条件を満たす本。

***山崎圭次郎「環と加群」 [#id7de688]
詳しすぎるし古いので通読するには適さない。PIDのことを主イデアル整域と書いていたり、UFDのことをGauss整域と書いていたりして時代を感じる。しかし多くのことが載っていて頼りになる。 

***M.Scott Osborne「Basic Homological Algebra」 [#z9e6c7d4]
非常に説明が丁寧で、行間が存在しない。例が豊富とはいえないが、日本語のホモロジー代数の本はどれも行間がたくさんあるので、こういう本は貴重。お薦めの本。
演習問題の解答を作成中…。
#ref(Osborne 演習2-6.pdf)
#ref(Osborne 演習2-7.pdf)
#ref(Osborne 演習2-8.pdf)
#ref(Osborne 演習2-12.pdf)

***雪江明彦「代数学」1,2,3 [#qd2d17cb]
第1巻と第2巻はすでに定番の感がある。行間もなく例も多い良書。誤植は結構あるが、親切なことに正誤表が[[著者のホームページ:https://www.math.kyoto-u.ac.jp/~yukie/]]にある。第3巻の後半はいろんな話題のつまみぐいになっているのが残念だが、お薦めの本。可換環論についてはあんまり詳しく書いていないことに注意。

***雪江明彦「整数論」1,2,3 [#vd596fcc]
整数論の広範な話題を懇切丁寧かつ詳細に語ってくれる希有な本。1巻はp進数など。2巻は代数的整数論。3巻は解析的整数論。第2巻で整数環の基底の決定について詳しく書いているのはこの本の特徴だと思う。整数論なのでFourier解析とか測度論とかガロア理論とかそのほかいろいろの予備知識を必要とするが、ほかの本を極力参照しなくても読めるように配慮がなされている。誤植は結構あるがやはり[[著者のページ:https://www.math.kyoto-u.ac.jp/~yukie/]]に正誤表が出ている。おすすめ。

***伊藤清三「ルベーグ積分入門」 [#z8f7c83b]
解析学Iの授業に先立って読んだが、授業のほうがよく整理されていた印象。測度論を勉強するには定番の本であり、実際良い本だと思うがもっと良い本はあるかもしれない。Lebesgue積分が存在することを最初に示しているが、退屈なので初読時にはそこは飛ばした方がいいと思う。測度論を勉強するほかの選択肢として、確率論系の本というのがある。後半の関数解析の話は黒田関数解析で読んだ方がいい。

***チャーチル&ブラウン「複素関数入門」 [#x2deff3f]
初学者向けの本。話題を絞って丁寧に解説している。比較的すぐ読み通せるので初めにこちらを読み、そのあとアールフォルスを面白いところだけ読むのがいいと思う。アールフォルスは初めての人にはきつい箇所もあるから。

***L.V.アールフォルス「複素解析」 [#j5076cc0]
分厚くて読むのが大変そうな見た目だが、実は位相の説明に序盤のかなりの紙数を割いているため実質的な内容はそう多くない。説明が丁寧とは言えないが、本質を突いたことが
簡潔に書かれている良書。解析接続のところでなにやら難しいことが書かれていて面食らったが、普通は一致の定理が理解できていれば十分であると聞いて安心した記憶がある。

***William Fulton & Joe Harris「Representation Theory A First Course」 [#l0abefc1]
分厚いしさぞ丁寧に書いてあるんだろうなと思ったらそうでもなかった。表現としてisomorphicであることの定義がはっきり書かれていないなど問題アリ。ただ具体例がたくさん載ってるのは素晴らしいので、しばらく読んでみようと思っている。雪江明彦先生のおすすめ。リー群の表現論についてはAnthony W. Knappの「Lie Groups Beyond an Introduction」がとても判りやすくて良いという話を聞いた。
演習問題の解答を作成中…。
#ref(Fulton&Harris 演習1-1.pdf)
#ref(Fulton&Harris 演習1-3.pdf)
#ref(Fulton&Harris 演習1-11.pdf)
#ref(Fulton&Harris 演習1-12.pdf)
#ref(Fulton&Harris 演習2-21.pdf)

***J.P.Serre「Linear Representations of Finite Groups」 [#qa8091a1]
Fulton Harrisと違ってとても薄い。G-linear mapにあたる用語が定義されていないっぽいのと、指標の直交性を示すのに表現行列を使うというかっこ良くない方法をとっているのが気になる。でもいい本だと思う。

***黒田成俊「関数解析」共立出版  [#f38365f4]
説明が丁寧な上に広範な話題を解説してくれる良い本。上級者向けの本と紹介されることがあるが、行間はないので初学者でも読める。ただし超関数の一般論は扱っていない。

***松本幸夫「多様体の基礎」 [#ree6cfd4]
説明は丁寧で行間もないのだが、例が深刻に欠乏しているので退屈きわまりない。多様体は位相空間ほどほかの分野で出てこないので、これは致命的だと思う。ほかの本として、Loring W. Tuの「An Introduction to Manifolds」が良書という評判を聞いた。

***加藤十吉「位相幾何学」 [#h265a03d]
ミツヨシと読む。ジュッキチではない。加藤毅先生のおすすめだが、僕には難しすぎた。途中で挫折。この本で理解できる人は幾何学の素養が既にある人だと思う。僕は代数トポロジーの勉強を始めたばかりのころ、良い本を探して人におすすめの本を訊いてまわったり、図書館を物色したり、できる限りのことをしたが、結局直感的イメージの詳細な説明がある本はHatcherしか見つけられなかった。Hatcherの項でさんざん悪口をいいつつも「読む価値がある」とツンデレ気味なのはそういう事情による。

***内田伏一「集合と位相」 [#e11251dc]
丁寧に書いてあるのだが、例が少ないので別の本で補う必要がある。位相空間は複素函数論や関数解析や代数的整数論といった分野で次々と登場するため、これを読んでからそういった分野の本を読むといいと思う。

***Allen Hatcher「Algebraic Topology」 [#ye3fb1f2]
浅岡正幸先生のおすすめと聞いた。すごく分厚い。絵や例がたくさん載っている。直感的な説明をし尽くしてから理論を語るという書き方で、くどいくらいたくさん説明してくれる。基本群を語る前に、まず投げ縄の話を…という調子。正誤表が[[著者のホームページ:https://www.math.cornell.edu/~hatcher/AT/ATpage.html]]で手に入る。本全体も同じ著者のページからダウンロードできる。演習問題がしこたま載っているが、答えやヒントは全くないという欠点がある。答えが欲しい人は[[このページ:https://www.google.co.jp/url?sa=t&rct=j&q=&esrc=s&source=web&cd=6&ved=0ahUKEwjh2q-Q3LTZAhVIu7wKHZkiCWcQFghYMAU&url=http%3A%2F%2Fwww.math.wisc.edu%2F~ccheng%2Fcourses%2FHatcher.pdf&usg=AOvVaw203Czv_TYH0MBaYRSyEkCj]]に誰かが作った答があるのでダウンロードしておこう。ただこの本、冗長なほどイメージを語るくせして証明が非常にザツ。もうどこもかしこも行間だらけ。おまけに用語の定義までフィーリングで書いてあるので、語によってはほかの文献ではどういう定義になっているか調べる必要がある。要はひどい本である。でも代数的トポロジーの本で例や直感的イメージの説明がこれほど多い本は稀なので、読む価値があると思う。
代数トポロジーの本では、ほかにRaoul Bott&Loring W. Tuの「Differential Forms in Algebraic Topology」が有名である。たいへんな名著らしい。
ノートを作成中…
#ref(Hatcher 「Algebraic Topology」のノート.pdf)

***S.マックレーン「圏論の基礎」 [#n9d43e27]
僕にとって興味がわかない分野だが、随伴関手定理までは割とおもしろかった。圏論は教養。圏論の例はホモロジー代数や代数的トポロジーで多く出現するので、例が欲しい僕みたいな人はそういった分野の本を読むのがいいと思う。ほかにTom Leinsterの「Basic Category Theory」が良書であるという評判をよく聞く。

***斎藤正彦「線型代数学」「微分積分学」東京図書  [#a413f2e0]
二冊ともわかりやすくておもしろい。僕はラング線型代数も読んだが、こちらを推したい。微積の方は重積分の変数変換公式を厳密に証明していないし、ベクトル解析の説明が雑すぎるという欠陥を持つ。それでもよくまとまったいい本だと思う。

***加藤和也&斎藤毅&黒川信重「数論〈1〉Fermatの夢と類体論」 [#b00ebfa8]
数論セミナーで使用していた本。マゾ向き。

**ウェブサイトについて [#p8ce575f]
役に立つウェブサイトの紹介。

***[[Mathematics Stack Exchange:https://math.stackexchange.com/]] [#o0c48aff]
数学専門の知恵袋とでも言うべきサイト。洋書を読んでいて困ったときはまずここを覗いてみることを勧める。同じことで悩んでいる人が見つかればしめたもの。

***[[Easy Copy Mathjax:http://easy-copy-mathjax.xxxx7.com/]] [#k0224b89]
Texの例文集。なかなか便利。


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