井上亜星(イノウエアセイ)。整数論がやりたい。
良い本の情報は多ければ多いほど良い。ここに書いてあることは僕の独断と偏見にまみれているので、まれいんさんのブログなども参考にしてください。
見出しについてるローマ数字はだいたいの読む順番を表しているつもり。予備知識がたくさん要るものほど後ろの方にくるようになっているはず。
見出しに名前が挙がっているものは僕が多少とも読んだもの。他は、先生や直接の知り合いに良いという評判を聞いたもの。ただしまた聞きを含む。
高木貞治「解析概論」にいきなり挑戦して玉砕した人は多いのではないか。名著ということと、初学者向きということは全く別のことである。これは二冊ともわかりやすくておもしろいので挫折しにくい。ただ微積の方は重積分の変数変換公式を厳密に証明していないし、ベクトル解析の説明が雑すぎるという欠陥を持つ。
文庫サイズなので読みにくい。群や環が出てくるが、説明が雑なので初学者向きでない。 でもこの本を読んでいたことがのちにFulton Harrisを読むときに役に立った。外積代数などの説明がある本を読んでおくのはよいこと。
内田と、松坂和夫「集合・位相入門」が二大入門書。新しいのでは斎藤毅「集合と位相」が良書と聞く。松坂のほうは集合論の記述が充実していて、斎藤のほうは圏論的に書かれているということである。
丁寧に書かれた良い本。位相空間は複素函数論や関数解析や代数的整数論といった分野で次々と登場するため、位相の勉強は早めにしたほうがよい。
可換環論について詳しく知りたい人は雪江第3巻よりむしろ松村英之「可換環論」などを読んだほうがいいと思われる。あと「Atiyah MacDonald可換代数入門 」(いわゆるアティマク)が有名。渡部敬一&後藤四朗「可換環論」は二人の著者のチームワークがなってないという話を聞いた。
第1巻と第2巻はすでに定番の感がある。実際第1巻と第2巻はよく授業の参考書として指定される。行間もなく例も多い良書。誤植は結構あるが、親切なことに正誤表が著者のホームページにある。第3巻の後半はいろんな話題のつまみぐいになっているから、その先を詳しく知りたい人はその分野の本を読もう。本文中に間違いはぜんぜん無いのだが、唯一第一巻冒頭に「自然な対象とは関手を使って定義される対象である」とよくわからないことが書いてある。圏論を知らない人が誤解するかもしれないし、一応注意しておく。
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詳しすぎるし古いので通読するには適さない。PIDのことを主イデアル整域と書いていたり、UFDのことをGauss整域と書いていたりして時代を感じる。しかし多くのことが載っていて頼りになる。
野口潤次朗「複素解析概論」はアールフォルスの下位互換という印象。笠原乾吉「複素解析」(ちくま学芸文庫)が良いという話を聞いた。最近はもっといい本があるのかもしれない。
初学者向けの本。話題を絞って丁寧に解説している。比較的すぐ読み通せるので初めにこちらを読み、そのあとアールフォルスを面白いところだけ読むのがいいと思う。アールフォルスは初めての人にはきつい箇所もあるから。
分厚くて読むのが大変そうな見た目だが、実は位相の説明に序盤のかなりの紙数を割いているため実質的な内容はそう多くない。説明が丁寧とは言えないが、本質を突いたことが 簡潔に書かれている良書。解析接続のところでなにやら難しいことが書かれていて面食らったが、普通は一致の定理が理解できていれば十分であると聞いて安心した記憶がある。
解析学Iの授業に先立って読んだが、授業のほうがよく整理されていた印象。測度論を勉強するには定番の本であり、実際良い本だと思うがもっと良い本はあるかもしれない。Lebesgue積分が存在することを最初に示しているが、退屈なので初読時にはそこは飛ばした方がいいと思う。測度論を勉強するほかの選択肢として、確率論系の本というのがある。後半の関数解析の話は黒田関数解析で読んだ方がいい。
Fourier解析のところは複素解析の知識が必要なほか、ルベーグ積分を使わないと完備性が示せない。
説明が丁寧な上に広範な話題を解説してくれる良い本。上級者向けの本と紹介されることがあるが、行間はないので初学者でも読める。ただし超関数の一般論は扱っていないので、解析学の授業の副読本にするときは注意が必要。
説明は丁寧で行間もないのだが、例が深刻に欠乏しているので退屈きわまりない。多様体は位相空間ほどほかの分野で出てこないので、これは致命的だと思う。ほかの本として、Loring W. Tuの「An Introduction to Manifolds」が良書という評判を聞いた。
田村一郎「トポロジー」を勧められることが多い。
ミツヨシと読む。ジュッキチではない。加藤毅先生のおすすめだが、僕には難しすぎた。途中で挫折。この本で理解できる人は幾何学の素養が既にある人だと思う。僕は代数トポロジーの勉強を始めたばかりのころ、良い本を探して人におすすめの本を訊いてまわったり、図書館を物色したり、できる限りのことをしたが、結局直感的イメージの詳細な説明がある本はHatcherしか見つけられなかった。Hatcherの項でさんざん悪口をいいつつも「読む価値がある」とツンデレ気味なのはそういう事情による。
浅岡正幸先生のおすすめと聞いた。すごく分厚い。絵や例がたくさん載っている。直感的な説明をし尽くしてから理論を語るという書き方で、くどいくらいたくさん説明してくれる。基本群を語る前に、まず投げ縄の話を…という調子。正誤表が著者のホームページで手に入る。本全体も同じ著者のページからダウンロードできる。演習問題がしこたま載っているが、答えやヒントは全くない。答えが欲しい人はこのページに誰かが作った答があるのでダウンロードしておこう。ただこの本、冗長なほどイメージを語るくせして証明が非常にザツ。もうどこもかしこも行間だらけ。おまけに用語の定義までフィーリングで書いてあるので、語によってはほかの文献ではどういう定義になっているか調べる必要がある。要はひどい本である。でも代数的トポロジーの本で例や直感的イメージの説明がこれほど多い本は稀なので、読む価値があると思う。 行間以外では、圏論的な解釈があまり書かれていないということがある。Lifting Propertyの図式も説明してくれないし、Van Kampen の定理がpush outとして解釈できることが書かれていない。push outとしての解釈は、たとえばWilliam Fulton「Algebraic Topology」やGlen. E. Bredon「Topology and Geometry」などに載っているので参照すべき。Bredonは圏論的な説明が多いようだ。
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下の2冊以外には中岡宏行「圏論の技法」とかスティーブ・アウディ「圏論」の名前をよく聞く。「圏論の技法」を圏論を勉強する1冊目にはしない方がいい。
僕にとって興味がわかない分野だが、随伴関手定理まではおもしろかった。圏論の例はホモロジー代数や代数的トポロジーで多く出現するので、例が欲しい人はそういった分野の本を読むのがいいと思う。
Tom Leinster「Basic Category Theory」の日本語訳。訳者が演習問題に解答をつけてくださっているので、この本は原書より日本語訳がオススメ。現在、圏論の入門書の決定版だとおもう。
ホモロジー代数を勉強するとき普遍性をわかっていないとつらいと思ったので圏論の次にした。雪江先生はHenri Cartan & Samuel Eilenberg「Homological Algebra」がオススメらしい。
非常に説明が丁寧で、行間が存在しない。立体的な図式が出てくるなど説明するのが面倒なところにさしかかっても今まで通りじっくり丁寧に説明してくれる姿はけだし数学書の鑑である。例が豊富とはいえないが、日本語のホモロジー代数の本はどれも行間がたくさんあるので、こういう本は貴重。抽象的で動機がつかみにくい話が多いのは否めないので、ハッキリした動機がなければ第5章くらいで読むのを止めるのも手。
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線型代数の延長と思いきや、非可換な環上の加群がでてくるのでホモロジー代数の次にした。リー群の表現論についてはAnthony W. Knapp「Lie Groups Beyond an Introduction」がとても判りやすくて良いという話を聞いた。あとBrian Hall「Lie Groups, Lie Algebras, and Representations」が雪江先生のおすすめ。
分厚いしさぞ丁寧に書いてあるんだろうなと思ったらそうでもなかった。表現としてisomorphicであることの定義がはっきり書かれていないなど問題アリ。あとコンパクト群の登場が遅い。ただ雪江明彦先生のおすすめ。
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Fulton Harrisと違ってとても薄い。G-linear mapにあたる用語が定義されていないっぽいのと、指標の直交性を示すのに表現行列を使うというかっこ良くない方法をとっているのが気になる。他のところでも、何故かこの本は基底をとりたがるようだ。おそらく入門書として書かれた本だから、ざっと概観したい人向け。
初等整数論に予備知識はあんまり要らないが、代数的整数論はGalois理論とDedekind環論の応用であるほか、解析的整数論ではLebesgue積分や複素解析やFourier解析の知識を若干使う。
類体論はJ.P.Serre「Local Fields」か、Andre Weil「Basic Number Theory」のほぼ2択。Serge Lang「Algebraic Number Theory」は初学者向きでないという話を聞いた。足立恒雄&三宅 克哉「類体論講義」という選択肢もあるにはあるが、どうも食指が動かない。 楕円曲線論という分野もある。雪江先生にはJoseph H.Silverman「The Arithmetic of Elliptic Curves」を薦められた。いわゆるAECである。日本語の「楕円曲線論入門」は「Rational Points on Elliptic Curves」の翻訳であり、まったくの別物であることに注意。保型形式論という分野もあり、院生の人に訊くとFred Diamond&Jerry Shurman「A First Course in Modular Forms」を薦められた。
整数論の広範な話題を懇切丁寧かつ詳細に語ってくれる希有な本。整数論を学ぶ入門書として素晴らしい出来。1巻はp進数など。2巻は代数的整数論。3巻は解析的整数論。第2巻で整数環の基底の決定や類数計算など具体的な問題について詳しく書いているのはこの本の特徴だと思う。類数計算はいいぞ。整数論なので多くの予備知識を必要とするが、ほかの本を極力参照しなくても(理論上は)読めるように配慮がなされている。まあ実際には適当な代数の本と同時に読んだほうが良いと思う。誤植は結構あるがやはり著者のページに正誤表が出ている。
数論セミナーで使用していた本。マゾ向き。
当然の予備知識として圏論を使う本もあるので、圏論は必須。また高度な可換環論の知識が要求される。ホモロジーも要るようだ。
R.ハーツホーン「代数幾何学」が有名かつ定番。上野健爾「代数幾何」は証明が間違っている箇所があるらしい(未確認)。あと、Qing Liu「Algebraic Geometry and Arithmetic Curves」(数論幾何寄り)、David Mumford「The Red Book of Varieties and Schemes」が良いという話を聞いた。
2010年出版の新しい本である。とても分厚い。まだあまり知られてない本だけど隠れた好著かもしれないと思って読んでいるところ。行間と言うほどの行間もなく、付録に可換環論と圏論の予備知識が結果だけまとめられているなど丁寧に書かれている印象がある。ハーツホーンと比べると進行が遅いから、ハーツホーンの代わりにはならないかも。スキームのコホモロジーは第2巻で扱うと予告されているが、第2巻はまだ出ていない。
論理学をつくることを介して論理学を学ぶ、というおもしろい趣向の本。「ならば」の真理値はなぜああなっているのか?とか、述語論理はなんのために考えられたか?といった素朴な疑問に丁寧に答えてくれる。数学の本とは思えないほど文体にユーモアがあって楽しい。「えばんげりおんのあやなみれいをちゅくってえ」には笑った。
確率論基礎の教科書だった。数学科の人間向けではないだろうが、名著という評判に違わずわかりやすく面白い本。随所にはさまれたギャグも楽しい。この本にある「無作為」という言葉の使い方への注意はあざやかで、一読の価値があるように思う。
数学専門の知恵袋とでも言うべきサイト。洋書を読んでいて困ったときはまずここを覗いてみることを勧める。同じことで悩んでいる人が見つかればしめたもの。
Texの例文集。たいへん便利。複雑な図式の書き方はこのサイトにはない。Xy-picを使うといい。
数学教室の事務で頼むと見せてもらえる。写真をとるのはダメだが書き写すのはよいという規則である。なんのためにある規則なのかわからないが、これはその規則に従って写したものに、ついでに解答例を付けたもの。
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(おわび)2017年の問1(1)の解答例が間違っていたので修正した。(2018/3/04/10:26)