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春セミナー2018†
- 春セミナーとは
- S2S団員が勉強してきたことを一般に向けて講義します。非団員の方や高校生の方、どんな方でも参加できます。また部分参加も可能ですのでぜひお越し下さい!
- 時期
- 3月13,26,27,28日
- 場所
- 3/13 京都大学吉田キャンパス北部構内理学研究科6号館二回生控室
3/26~27 6号館207(予定)
プログラム†
- 3限…13:00〜14:30, 4限…14:45〜16:15, 5限…16:30〜18:00
| 03/13(火) | 03/26(月) | 03/27(火) | 03/28(水) |
3限 | Fermat予想の証明の概略(前田) | 偏微分方程式の「へ」の字(リサージュ) | | |
4限 | 格子理論とK3曲線(まれいん) | 代数的整数論入門(ボブ) | 宇宙誕生から太陽系形成まで(ゴジラ) | 交叉形式とDonaldsonの定理(井森) |
5限 | | Pointless Topology概説(paper3510mm) | 虚数乗法論(前田) | ゲージ理論のBRST量子化(島地) |
- タイトル:Fermat予想証明の概説(13日)、
虚数乗法論(27日)
- 前提知識:学部2、3回生までで習う数学と代数曲線に親しみがあると望ましい
- アブストラクト:
13日分:
Fermat予想は1次元Abel多様体である楕円曲線のGalois表現について深く考察することで証明がなされた。Galois表現は幾何的な物から作るかエタールコホモロジーを使うことで得ることができる。今回は前者の作り方について、楕円曲線から作る方法と保型形式から作る方法を紹介し、その応用としてFermat予想の証明の流れを解説したい。楕円曲線と保型形式を定義から紹介するため、時間の都合上Fermat予想の証明は細部まで解説することができず、それぞれに付随するL関数からの視点について(あまり)話すことができない。この点をご容赦いただいた上で、異なる数学的対象がGalois表現を通じて繋がる様子をお見せできればと思っている。
27日分:
一般にある代数体の最大Abel拡大を具体的に構成せよという問題は、Riemann予想と並んで1900年にHilbertが提出した23の問題のうち、未解決のまま21世紀に持ち越されたうちの1つの問題である。この問題は類体の構成問題と呼ばれ、いくつかの特殊な体では解決されている。今回は虚2次体に関する類体の構成(いわゆるKroneckerの青春の夢)を楕円曲線に関する虚数乗法論を用いて証明し、時間があればその他の進展についても述べたい。
- タイトル: 格子理論とK3曲面
- 前提知識: 多様体(微分形式くらい)
- アブストラクト: K3曲面はコホモロジーの情報で空間の同型類や写像のuniquenessが分かる、非常に強い複素曲面です。格子理論(有限生成自由Abel群とその上の双線形形式の理論)を導入して、ついでにK3の話をしようと思います。
リサージュ†
- タイトル:偏微分方程式の「へ」の字
- 前提知識:線形空間と完備性の定義
- アブストラクト:身近な現象を数学的にとらえようとすると、結構な頻度で偏微分方程式を解くことになります。線形の偏微分方程式を解くために、何とかして線形代数の考え方(それこそ連立方程式を解くような話)に帰着させようぜ、というのが今回の趣旨です。偏微分方程式論全体から見ると「へ」の字の零集合分くらいの話しかしませんが、軽めの話題をいくつか拾っていきたいと思います。
- タイトル:代数的整数論入門
- 前提知識:群、環、体、イデアルの定義
- アブストラクト:代数的整数論というと、なんとなく抽象的であり高校の時に楽しんでいた初等的な問題とはかけ離れたものに思えるかもしれません。しかし代数的整数論における多くの理論は古典的な問題をモチベーションとして発展してきたもので、実際に豊富な応用例があります。今回はちょっと代数の初歩をかじった新入生や代数的整数論を全く勉強したことがない人でも楽しく聞けるように、厳密な証明はあまりせず、古典的な問題と絡めながら代数的整数論の初歩を紹介したいと思います。
paper3510mm†
- タイトル:Pointless Topology概説
- 前提知識:集合と位相、圏の言葉、束の基本
- アブストラクト:pointless topologyとは、その名の通り"点のない"位相空間論のことです。通常の位相空間は、集合とその部分集合族(位相)の組であって、位相についていくつかの条件を満たすものです。この位相が満たす代数的条件を取り出した代数をframeあるいはlocaleと呼び、これを"位相空間"と見なして位相空間論を展開するのがpointless topologyという分野です。点の集まりとして空間があるのでなく、空間が先に与えられそれから点が定まるという逆の発想があり、「"点"とは何か」という問いに対するpointless topology的回答を紹介したいと思います。
- タイトル:宇宙誕生から太陽系形成まで
- 前提知識:高校物理
- アブストラクト:我々はどこから来たのでしょうか? その答えを、宇宙科学の観点から考えてみましょう。まず、今から138億年前に宇宙が誕生し、その直後にビッグバンが起きました。その後、数多の星が生まれ、死に、また生まれるという過程を繰り返してきました。この一連の流れを宇宙化学の観点から記述し、地球や我々の身体を構成する元素がどのように合成されたのかを紹介します。次に、今から46億年前に太陽が誕生し、その副産物として惑星やその他の小天体が形成されました。このような太陽系形成の過程は、物理学を用いて記述することができます。現在定説となっている太陽系形成論を紹介し、その物理的過程を分かりやすく説明します。
- タイトル: 交叉形式とDonaldsonの定理
- 前提知識: 微分幾何学、トポロジーの基礎
- アブストラクト: 4次元トポロジーの解析は代数トポロジーの手法にのみ頼ることはできず、高次元よりはるかに難しい。交叉形式は4次元多様体のトポロジーに関する豊富な情報を含んでいる。Donaldsonは正定値交叉形式をもつ滑らかな単連結4次元多様体について、交叉形式はdiag(1,…,1)に対角化可能であることを示した。この証明にはYang-Millsゲージ理論が応用され、ゲージ理論のトポロジーへの応用の幕開けとなった。またDonaldsonの定理はFreedmanの結果と合わせることで、微分構造を持たない4次元多様体の存在を示している。講義ではDonaldsonによる「衝撃的」な証明の概略を述べることにする。
- タイトル:ゲージ理論のBRST量子化
- 前提知識:多様体
- アブストラクト:「対称性を持った古典系を量子化するさいには非物理的な方向の自由度を削って量子化しなければならないが、ゲージ対称性のような局所的な対称性の場合はディラック括弧で直接的に自由度を削る方法が使いづらい。BRST量子化はゲージ理論の量子化を与えるが、これは自由度を削るというよりは余分なゴーストの自由度を加えて新たに別の対称性を付け加える方法である。」といった内容を話します。アノマリーはないとします。