events
春セミナー2017†
- 春セミナーとは
- S2S団員が勉強してきたことを一般に向けて講義します。非団員の方や高校生の方、どんな方でも参加できます。また部分参加も可能ですのでぜひお越し下さい!
- 時期
- 3月13,14,15,23,24日
- 場所
- 京都大学吉田キャンパス北部構内理学研究科6号館207講義室
プログラム†
- 3限…13:00〜14:30, 4限…14:45〜16:15, 5限…16:30〜18:00
| 03/13(月) | 03/14(火) | 03/15(水) | 03/23(木) | 03/24(金) |
3限 | スペクトル分解とEgorovの補題(ryo) | 概正則曲線のモジュライ(まさおにぃ) | スピンスピン!!(たっつー) | 複素解析と流体力学(炬燵) | 零点定理の拡張(松田) |
4限 | 「数学者のための量子力学入門」を読む(島地) | 物理と数値計算(ゴジラ) | 圏論的一階述語論理とモデル理論(あらたけ) | けんろん!(今村) | 格子理論(まれいん) |
5限 | | | なぜ空は青いのか(kagakuma) | ランダムウォークに対する重複対数の法則(山戸) | |
講義ノートをryoにあげてます.
- タイトル:スペクトル分解とEgorovの補題
- 前提知識:ヒルベルト空間上の有界線型作用素、ルベーグ積分
- アブストラクト:エルミート行列がユニタリ作用素により対角化されるのと同様にヒルベルト空間上の自己共役作用素(エルミート作用素)はスペクトル分解される。Hilbert空間上の有界線型作用素全体から成る空間B(H)の積と共役について閉じた閉部分空間をC^*-環という。可換C~*-環は局所コンパクト空間上の無限遠点で0になる連続関数のなす空間と同型になり。特に、単位元を持つ可換C^*-環はコンパクトハウスドルフ空間上の連続関数のなす空間と同型となる。さらに、B(H)のC^*-環で弱閉なものをvon Neumann環といい、可換von Neumann環はあるコンパクト空間Γとそれ上の正のラドン測度μを用いてL^∞(Γ,μ)と表される。このアナロジーからEgorovの補題を非可換に拡張できる。
- タイトル:『「数学者のための量子力学入門」を読む』
- 前提知識:ヒルベルト空間上の非有界自己共役作用素のスペクトル分解定理がわかるくらい
- アブストラクト:量子力学の数理の初歩について話します。
量子系の状態はある複素ヒルベルト空間Hのノルム1の元で表され、系の物理量はH上の自己共役作用素Aで表されるものと定めます。物理量AについてPをAのスペクトル測度としましょう。系が状態ψにあるとき、物理量Aの観測値が区間[a,b]に入る確率は<ψ,P([a,b])ψ>であると定めます。このとき状態ψにおける物理量Aの観測値の期待値は<ψ,Aψ>となります。
古典力学からの類推として、ポアソン括弧を作用素の交換子に置き換えることで量子系に正準交換関係を課します。この置き換えを正準量子化といいますが、古典での時間発展方程式と量子系での時間発展方程式が見事に対応づけられます。またネーターの定理も古典・量子、ともに成立することになります。正準量子化は数学的には、有限自由度の場合はあまり問題なく行えるのですが、無限自由度の場の理論では一概には言えません。
こんな感じの話をします。
- 参考文献:「数学者のための量子力学入門」(原 隆)←pdfで落ちてる
- タイトル:概正則曲線のモジュライ
- 前提知識:
- Gromov-Witten不変量が困難なく定義できるsemi positiveな閉シンプレティック多様体上の種数0の概正則曲線のモジュライについてその雰囲気を解説する。
- タイトル:物理と数値計算
- 前提知識:1回生の微積と線形代数
- アブストラクト:物理学では、数値計算を用いた研究が広く行われています。物理学に登場する微分方程式を題材にして、常微分方程式・偏微分方程式の数値解法をいくつか紹介します。計算機は無限大や無限小の値を扱えないため、微分を差分に置き換える"差分法"を用いて微分方程式を解きます。常微分方程式の例として、万有引力が働くときの運動方程式を取り上げ、オイラー法、ルンゲ・クッタ法、シンプレクティック積分法を紹介します。偏微分方程式の例として、拡散方程式を取り上げ、陽解法と陰解法を紹介します。式の意味を視覚的に分かりやすく説明します。そして、実際に行った数値計算の結果を動画でお見せします。
- タイトル:スピンスピン!!
- 前提知識:テンソル代数、量子力学におけるスピンの理論(?) (テンソル代数に関しては講義ノートにまとめます。)
- アブストラクト:量子力学を学んだ人は誰しもがこんな疑問を抱くと思います。「スピンって一体なんやねん!」この講義ではそんな疑問に答えるべく、スピンを幾何学的に捉えることを目標としたいと思います。大まかな流れとしては、Clifford代数を用いて特殊直交群の非自明二重被覆となるスピン群を構成し、その表現空間としてスピノル空間を定義します。時間が余れば、スピノル場を考えるために(擬)Riemann多様体の各点の接空間に対するスピノル空間を張り合わせてできるスピノル束を構成するためにスピン構造なるものを定義します。僕自身の理解が浅いためあまり本質的なことは言えないと思いますが、少しでも皆さんの理解の助けになればと思います。
- タイトル:圏論的一階述語論理とモデル理論
- 前提知識:数理論理学および圏論の入門程度
- アブストラクト:圏論的一階述語論理は、モデル理論に対する函手的意味論としてMakkai & Reyesによって創始された。この枠組みの下で圏論的手法を利用することで、モデル理論のいくつかの古典的結果を一般化することが可能である。しかし、より現代的なモデル理論については、圏論的一階述語論理の顕著な応用は発見されていない。
本講演では、「圏論的一階述語論理の現代モデル理論への応用」の取り組みの一環として、講演者が修士課程において得た成果について概説する。函手的意味論の視点からは、公理系に対してclassifying pretoposと呼ばれる圏を対応させることができる。そこで、圏論的手法によって公理系について調べるためには、pretoposに関する種々の圏論的概念がどのようなモデル理論的概念に対応しているかを調べることが重要になる。本講演では、pretoposの間の函手とモデル理論における「翻訳」との関わりについて述べ、この観察が示唆する新たな「圏論的モデル理論」の方向性について論じることにする。
- タイトル:『なぜ空は青いのか』
- 前提知識:マクスウェル方程式は既知とする。簡単な常微分方程式の解法について知識を要するかもしれないが、基本的には一から説明する
- アブストラクト:これは現在Twitterで公開している #摂津北山高等学校理学部 を執筆する準備として勉強したものについて話す。空が青く見える理由について物理学的にきちんと説明することを試みたい。また時間があれば生物学的な理由についても述べられるといいだろうと思うが、質問に答えられる自信がないのでやるかどうかはわからない。この講義は団員非団員かかわらず「s2sってレベル高くて俺には無理だわ」と思っている人のために「自分が話したいことであれば客観的に見たレベルなんて関係ないんだ」というメッセージを込めて行うものである。
- タイトル:複素解析と流体力学
- 前提知識:一回生程度の微積分
- アブストラクト:流体力学を用いて複素解析のイメージ作りをします。二次元非粘性非圧縮流体について、通常の渦なしの定義と直感的な渦なしの流れとのズレを見て、それを埋めるために点渦や循環というものを定義します。どんな場所での流れを考えるか(言い換えれば正則関数の定義域の位相的性質)が本質的であること、点渦の性質の良さから導かれる種々の定理、そして流体力学の目で見れば複素解析で登場する数学的なものに物理的な意味を持たせられることを話します。正則の定義から始めるので一回生で習う微積分の知識か熱意があれば大丈夫です。熱意は配布するので、ぜひ聞きに来てください。そして数理流体の沼に片足を突っ込みましょう。
- タイトル:けんろん!
- 前提知識:なし
- アブストラクト:工事中(圏を定義して米田の補題を示すんじゃないかなあ)
- タイトル:ランダムウォークに対する重複対数の法則
- 前提知識:なし。
- アブストラクト:ランダムウォークに対する重複対数の法則をスコロホッド埋め込みという手法を用いて証明する。重複対数の法則はランダムウォークのpathごとの平均からのずれの時刻無限大でのオーダーを正確に与える法則である。よく知られている大数の強法則が平均からのずれが時刻のオーダーより小さいということを述べているだけであることを思えば、この法則が非常に精密なものであるかが分かる。
スコロホッド埋め込みというのはランダムウォークのブラウン運動への「埋め込み」である。この「埋め込み」というのがどのような対応なのかはここでは説明しないが、ブラウン運動とランダムウォークを独立に走らせてぶつかった点を対応させるというような単純なものでは無いことを注意しておく。
この講義は「ランダムウォークに対する重複対数の法則を知りたい人」よりも、「確率論がどのようなことをやっているのか知らない人」を主な対象としている。今回の話題が確率論の典型的な話題という訳ではないが、講義の中でマルチンゲール、強マルコフ性、任意時刻などといった確率論特有の概念を導入し、それを具体的な問題の中で用いる。それを通じて確率論の雰囲気が少しでも伝わることを期待している。
- タイトル:零点定理の拡張
- 前提知識:可換環論の基礎。準素分解,Zariski位相を知っていると話が早い。
- アブストラクト:体k上のaffine空間A^nとその座標環(n変数多項式環)Γ(A^n)=k[X1,...,Xn]に対して、多項式の集合をその共通零点集合に移す写像Vとaffine空間の部分集合をその上で0になる多項式が成すイデアルに移す写像Iが定まる。Hilbertの(強)零点定理(Nullstellensatz)とは、kが代数閉体のときΓ(A^n)の任意のイデアルIに対してI(V(I))=√Iが成り立つというものであった。これを射影空間P^nとその座標環(n+1変数多項式環)Γ(P^n)=k[X1,...,Xn+1]に拡張したものは射影零点定理(Projective Nullstellensatz)と呼ばれ、少しの例外を除いて斉次イデアルIに対しI(V(I))=√Iが言える。今回はこれらを更に一般のmultispace M=P^n_1×・・・×P^n_r×A^mとその座標環Γ(M)(n_1+・・・+n_r+r+m変数多項式環)に拡張したMulti-Nullstellensatzを定式化できたので紹介したい。
- タイトル:格子理論
- 前提知識:Sylvesterの慣性法則、群論(剰余群がわかるくらい)
- アブストラクト:実ベクトル空間に非退化な双線形形式が定まっているとき、Sylvesterの慣性法則により基底を取り換えることでその行列表示を1と-1のみからなる対角行列にすることができました。
このとき1, -1の数を考えてこれを(p,q)-typeと呼ぶことにすると、n次元実ベクトル空間の非退化な双線形形式は(n,0),(n-1,1),...,(0,n)-typeのn+1種類に分類することができます。
ではこれを実ベクトル空間ではなく、Z上の自由加群で考えてみましょう。これはベクトル空間とほぼ同じものですが、スカラー倍を実数倍ではなく整数倍のみで考えるのです。
こうすると1/2倍など分数倍ができなくなるため、Sylvesterの慣性法則では考えることができません。ナンテコッタイ/(^p^)\
今回はこの特殊な場合として、不定値ユニモジュラー格子と呼ばれるものの分類定理を行います。